むち打ち症とは?

むち打ち症とは?

むち打ち症は目に見えない大きなダメージを受けています!

レントゲン診察のイラスト

様々な診断を下された。一体どれが正しいの?

  • むち打ち症?
  • 頚部捻挫(けいぶねんざ)?
  • 頚椎捻挫(けいついねんざ)?
  • 頚部挫傷(けいぶざしょう)?
  • 外傷性頚部症候群(がいしょうせいけいぶしょうこうぐん)?
  • 外傷性頚部捻挫(がいしょうせいけいぶねんざ)?

正しい診断名は「外傷性頚部症候群(がいしょうせいけいぶしょうこうぐん)」と言います。
こちらではわかりやすく表現する為に「むち打ち」という言葉を使っていきます。

むち打ちは一般的にレントゲンで骨折(こっせつ)や脱臼(だっきゅう)が確認されない事が多く、「骨に異常がない」との事で自然治癒するまで首のコルセットなどを装着し経過観察をしますが、長期間経ってもなかなか治らないといった事例が見受けられます。

どうしてむち打ち症は起こるのか?

衝撃を受けた際に首が激しく揺さぶられたイラスト

交通事故で首をぶつけたわけではないのに、
どうしてむち打ちになってしまうのでしょうか?

むち打ち症は、交通事故のケガで最も多く発生する症状で追突などの衝撃を受けた際に首が激しく揺さぶられ、大きなダメージを負うことから起こります。

追突による衝撃が車体からバックシートを伝わり最終的に首へと伝わります。人間の頭部は、体重の約8%(平均して5~6kg)の重さがあり、それを支えている首に突然大きな負担がかかることによって、首に沢山ある小さな関節が一瞬で捻挫してしまう事でむち打ち症になってしまいます。
衝撃の伝わりの順番のイラスト
自動車で衝突事故が起こった瞬間ドライバーの体が急激に前に押し出されてしまいます。頭は重く一瞬動きが遅れるのでまず首が後ろへしなり、その反動で前へしなります。

衝突の速度や、ヘッドレストの高さ、助手席の物を取ろうとしていた瞬間に衝突を受けたなどの受傷時の姿勢によっても身体に加わる力は大きく変化しますが、一般的に衝撃は①車体→②バックシート→③腰→④胸部→⑤首の順番に伝わります。

首の上から5番目(第5頚椎)と6番目(第6頚椎)の間にある関節で
ここが最もむち打ちで損傷が起こりやすい箇所です。
頸椎のレントゲン写真具体的には第5頚椎と第6頚椎の間(椎間関節)にある関節を保護する袋(関節包)が骨と骨に挟み込まれる事で炎症を起こし、痛みが発生します。
このような種類の怪我を椎間関節障害(ついかんかんせつしょうがい)又は、椎間関節性疼痛(ついかんかんせつせいとうつう)と呼びます。
この椎間関節の損傷による痛みがむち打ち損傷の痛みの大きな原因と考えられます。

むち打ち症になったらどうしたらいい?

薬剤師と治療する医師のイラスト交通事故直後は安静を図り、病院より処方される痛み止めのお薬や湿布薬を使用し炎症を鎮めることが最優先となります。
安静を図るために首の固定を使用することがありますが、固定をせずに早いうちから首の運動を伴った治療をした方が、固定をしていた場合と比べ治りが早いという報告があり長期間の固定は症状をかえって長引かせてしまう可能性があります。

首の炎症がある程度治まってきたのをみて、徐々に手技による施術や関節可動域訓練、温めるけん引するなどの物理療法を開始していき日常生活での痛みを感じるタイミングや動きなどをひとりひとり事故の機序が異なるので痛め方は異なります。一概に「これをすれば治る」というのはありません。当院では事故の状況を詳しくお聞きし、痛めた可能性のある関節や筋肉等を中心に緩めていきます。

様々なむち打ち症状

むち打ちと頭痛

頭痛のイラストむち打ち後の症状で首の痛みに次いで多いのが、頭痛です。事故直後や事故当日の晩や翌日などに出る事が多いです。(急性期の約97%に出現)次第に慢性化し数か月続いてしまう例もみられます。

むち打ちによる頭痛以外にも頭痛には様々な種類があります。頭痛外来という専門の外来ができるほど、頭痛の診断治療は複雑で難しいです。
事故前から緊張性頭痛や片頭痛(偏頭痛)、天候の悪化による頭痛に悩まされていたというような患者さんも多く、事故後の頭痛と合わさり日常生活に支障をきたします。

事故のむち打ちにより出現する頭痛の事を「頚椎原性頭痛(けいついげんせいずつう)」と言います。
この頭痛はむち打ちにより首の骨を痛め、それが原因で発症してしまいます。国際頭痛学会の基準ではこの頭痛は首の施術をすることで改善する頭痛と考えられています。
「頚椎原性頭痛(けいついげんせいずつう)」は、首の動きによって頭痛が出現し、痛みの出る場所は後頭部であることが多いです。

また事故により首や頭周辺の筋肉が持続的に緊張する為に、神経が圧迫され頭痛が出る事もあります。(大後頭神経性頭痛)

当院では、首の筋肉を緩め首の関節を動かして首回りの緊張を取ることからはじめていきます。

むち打ちとめまい

むち打ちとめまいめまいとは、バランス感覚を司る平衡感覚の障害です。
むち打ち症とめまいには一見関係が無さそうにみえるかもしれませんが事故後のめまいに悩まされている患者さんは多く、統計的にはむち打ち症患者の23%にめまいが発生しているとのデータがあります。
「事故後からめまいが出たが病院では関係ないと言われた」「首が固まっているだけ」という説明だけで、長い期間めまいに悩まされる患者さんが多いです。

筋肉の損傷が原因のめまい

むち打ち症では首の関節や筋肉以外にもこの「固有受容器(こゆうじゅようき)」を損傷してしまう事が多いです。
むち打ち症では首に大きな衝撃が加わります。その首には抗重力筋(こうじゅうりょくきん)と呼ばれる種類の筋肉が集中しています。
筋肉というと力こぶのような強く力を発揮するものというイメージがありますが、抗重力筋(こうじゅうりょくきん)は頭の位置の維持や、バランスを保つために使われる筋肉です。
日常での些細な首の傾きや位置の変化を感知する為に、首の抗重力筋(こうじゅうりょくきん)には「固有受容器(こゆうじゅようき)」が多く存在しています。

むち打ち症によって首の関節や抗重力筋(こうじゅうりょくきん)を損傷する事により、固有受容器(こゆうじゅようき)に異常な興奮が生じてしまい、めまいを引き起こします。

固有受容器(こゆうじゅようき):身体の傾きや姿勢の変化などを感知して脳に信号を送る検知器のようなものです。これらが正常に機能することで私たちは立ったり座ったり歩く等の様々な動きを円滑に行えます。

内耳(ないじ)の損傷が原因のめまい

むち打ちの衝撃により平衡感覚をつかさどる内耳(ないじ)という部分を損傷しめまいが出現します。
平衡感覚はもう一つ三半規管(さんはんきかん)という部位も司っていますが、むち打ち症では内耳(ないじ)の方が損傷しやすいです。
このめまいは回転性めまいと言い「目の前が回る」「目を瞑っていてもグワングワンする」といった症状が出現します。

自律神経系が原因のめまい

頚部交感神経症候群(けいぶこうかんしんけいしょうこうぐん)や、バレー・リュー症候群と呼ばれるむち打ち症の一種です。
むち打ちにより頚椎(首の骨)を損傷することにより、自律神経の交感神経が緊張してしまい、その領域を走っている血管である椎骨動脈(ついこつどうみゃく)が攣縮(れんしゅく)を起こし様々な症状が出現します。
めまい以外にも自律神経系の症状を中心に、後頭部の痛み、吐き気、耳鳴り、眼の疲れや視力の障害、不眠、顔や腕まわりの感覚異常、就寝時など夜間の腕の痺れなどが出現します。過度に安静にしすぎると自律神経系の症状の悪化や、関節が固まってしまう事がありますので、極力日常通りの生活を心掛けて頂き、運動療法を交えつつ慎重に施術を進めていきます。

めまいは病院で専門的に検査が出来ます。重心動揺計や、電気眼振図(ENG)、聴力検査を行う事により患者さんが今どのようなめまいを感じているか、どんな種類のめまいなのかを知る事ができます。
平衡感覚を専門としているのは、耳鼻科です。事故後にめまいがみられる場合、事故からしばらく経っているがめまいが出始めた場合は速やかに耳鼻科への受診をオススメします。